このエントリーは2011年5月に渋谷で行ったライブの際のセッティング説明です。
今回のエントリーはかなり自分の趣味嗜好に走った物言いをしていますので情報の取捨選択は上手に行ってくださいね。(笑)
クリップのURLはこちらになります。
http://www.youtube.com/watch?v=LkbLL_8gTig
この日はシカゴハウスやアシッドテクノのベーシックなイメージのセッティングを組みました。
ハードウェアから出てくる音を直接大音量で聴いて皆で楽しみたいという狙いがあったためです。
乱暴に言ってしまえば今回のセットは80年代~90年代にシカゴやデトロイトで発生したと言われるものを再現したようなものです。
信号の流れはこうしました。ライブセッティングシート ↓

使用機材はこれらです。
【使用機材・Machines】
Roland : TR-707(ドラムマシン)、TR-606(ドラムマシン)
RolandDG : CMU-810(アナログシンセ)
WillSystems : MAB-303(アナログシンセ)
FUTURERETRO : REVOLUTION(アナログシンセ)
KORG : KMS-30(シンクロナイザー MIDI OUT×2 DIN OUT×2)
TechnoSaurus : Cyclodon(アナログシーケンサー)
Boss : RPD-10(パンニングディレイ)、BX-60(6ch Mixer AUX SND×1)
ALESIS : Nanoverb(マルチリバーブ)
最終的な音声アウトをきちんとフォン6.3mmのL-R 2chアウトにまとめているところが現場のPAにやさしい仕様だと思いませんか?(←自己満足です笑)
でもイコールそれは自分が現場で用意しなければいけない機材が増えるという事でもあり大変なジレンマになります。「コレ持ってくのめんどくせーなー」というね(笑)。
でも今回はそういっためんどくささ以上に「一度もデジタライズされていない機材からの出音を直(チョク)で聴く!」という欲求が勝ったのでなかなかに無理をして現場まで機材を運びました。徒歩で。
機材、アダプター、ケーブル類、変換プラグ、テーブルタップ、アダプタートラブル時対応のための変え電池、機材スタンドなど、総重量は20kgを超えてました。
youtubeにアップしたこの動画クリップへはアメリカの方から、
「ヘイ!このライブセットは駄目だな。だってdrumtraksが入ってないじゃないか!俺はあのマシンが大好きなんだぜ。」(意訳)
といったコメントを頂きましたがそれに対してきちんと、
「俺は一人で機材運んだんだよ。な、言ってること分かるだろ?drumtraksは重過ぎるんだ。メーン!」(意訳)
と返答しておきました。drumtraksは8.3kgあります。2Lペットボトル4本以上分の重さを更に上記の機材達にプラスして現場に持っていくのにはかなり思い切った英断が必要です(笑)
※drumtraksとは1983年発売のSequential Circuits Inc社のドラムマシンです。以前のエントリーでも触れていますので興味のある方は合わせてどうぞ。
http://caknobs.cocolog-nifty.com/blog/2010/10/set-drumtraks-8.html
これらの機材を持っていって最終的な現場レイアウトはこうなりました。

真ん中に立って左右に手を伸ばして全ての機材のつまみがいじれるレイアウトになっています。
意図的にREVOLUTIONを右側に、MAB-303を左側に置いていますが(分かり辛いのですがTR-606の下にMAB-303を置いています)これは左右それぞれの手で同時に、かつ個別につまみひねりをするための配置です。
では接続の意図の説明をしていきますね。
マスターになっているのはアナログシンセのFUTURERETRO REVOLUTIONです。
REVOLUTIONはRolandのTB-303のようなベースラインを作れるシーケンサーを内蔵していますのでいわゆるアシッドベースラインを作る際にはとても重宝します。また、もともとがクリップのように現場の環境でリアルタイムにいじることを想定して設計されていますのでほとんどの操作をシーケンスを走らせたまま行うことが可能です。(動画クリップの途中でシーケンスパターンを変えたりテンポを遅くしたり早くしたりしていますが音を鳴らしたままそういった変更ができるのはこのマシンの魅力の一つだと思います)
そして今回初めて現場でチャレンジしたのがMAB-303によるユニゾンのダブルベース演奏でした。

MAB-303というのもTB-303のような音の出るアナログシンセです。ただしこのマシンにはシーケンサーが付いていないのでMIDIによって外部からコントロールしてあげないと音が出ません。ですのでパターンコントロールはREVOLUTIONで行ったわけです。
このようにREVOとMAB-303で同一のシーケンスパターンのベースラインを2つ用意したのには意図がありました。今回のようないわゆるアシッドテクノをフロアで再現した際によくあることなのですが、レゾナンスを上げてフィルターを開ききると低い帯域の音が聴こえなくなってしまい、グイグイ盛り上げていたノリがすっと引いてしまうことがあります。特に今回はメインのキックを鳴らしているのがTR-707だったため、TR-808やTR-909と比較するとロー帯域に厚みがありません。そのためこのセッティングではREVOか303のどちらかのベースを音圧がグイグイくるポイントにフィルターを閉じたまま置いておき、もう一方でフィルター開閉での展開作りをしています。個人的にこのダブルベースセッティングはとても気持ちよく楽しめました。(例えばクリップの4'40"~はREVOのベースはレゾナンスを上げずにフィルターを10%程度開いた低い音で固定しておき、MAB-303のほうのフィルターを開いて展開を作っています。)
REVOLUTIONがシステムのマスターになっていると書きましたが、REVOが持つDIN SYNC OUT端子からの信号はシンクロナイザーのKORG KMS-30に入れています。
今回はKMS-30によってCyclodon(アナログシーケンサー)のクロック数(≒BPM)だけを倍速で走らせています。そしてその倍速で走るCyclodonがCV/GATE信号によってCMU-810というアナログシンセを制御しています。
REVOLUTIONにもCV/GATE OUT端子が付いているのですが、そこからのコントロールではなく、別のシーケンスパターンでCMU-810を鳴らすためCyclodonを用意しました。

ドラムマシンのTR-707とTR-606には予め20パターン位づついろいろなパターンを打ち込んでおきます。例えば4つ打ちキックだけのパターンだとか、フィルインのパターンだとか、3連打ち・16分打ち・32分打ちロールといったものを仕込んでおくんです。で、その場の雰囲気やノリ、勢いに合わせてパターンをセレクトしていくワケです。フロアのみんなの盛り上がりを感じながらそれに合わせて柔軟に展開を作っていけるのもこういうハードウェアセットの利点ではないでしょうか?
このようにアナログシンセ3台とドラムマシン2台のセッティングだったのですが、これらの音を自分の手元で操作できるように小型の卓上ミキサーBoss BX-60に送っています。このミキサーにはエフェクトセンドが1系統あります。そこでそのSENDにはBossのパンニングディレイRPD-10とALESISのマルチリバーブNanoverbを直列で挟みました。

空間エフェクトにALESISのNanoverbをかましていますが実はこれがとても威力を発揮しています。特にMAB-303の音声には厚めにNanoverbをかます事が多かったです。クリップで言うと例えば2'00"あたりからのドラム隊が抜けた後に聴けるアシッドベースのフィルター開閉はMAB-303に減衰の長めの広いルームアンビエントをつけたベース音です。この空間っぽさがあるたけでアナログシンセの音が現代的なエレクトロに聴こえるようになります。Bossのハーフラックシリーズよりも更に小さなボディは持ち運びにも便利です。
自宅では今回のような大音量で出音をモニターできませんのでこうやって風圧を感じるくらいに音量を上げて機材からの出音を楽しめるのは本当に幸せな事です。
今後も自宅以外でこういうセットを組む際には「機材運搬による疲労」と「音を出す気持ちよさ」を天秤にかけて使用機材をセレクトしていくことと思います。
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